手形割引業の実態と将来

    初めて手形割引業者とお取引をされる方や現在取引がある業者への不安をお持ちの方へ、業者選びの基礎知識としてその実態と今後について理解を深めて頂きたく、内容をまとめてみました。

1.手形交換高の推移
新聞などのニュースで手形交換高が毎年減少をしているという事をお聞きになった事があると思います。 下のグラフは全国の手形交換高(枚数・金額)を表したものです。
ピークは平成2年の約5000兆円 平成25年は僅か366兆円まで激減しております。

手形交換高推移グラフ

ただ、この手形交換高には当座小切手(金額で全体の約70%)が含まれており、手形割引の対象となる約束・為替手形は約10%程度、金額では36兆円という数字です。
日本の経済規模はそれほど縮小していないのに何故手形がこんなに減少したのでしょう。 それは、金融の決済手段の多様化(ファクタリング、リース、クレジットなど)による影響が大きいという事です。 今後もこの状況は続くものと思われます。
36兆円もあれば市場規模としてはかなり大きいと思われるかもしれませんが、そのほとんどが金融機関の扱いとなり、その内2-3%程度が手形割引業者の扱いと思われます。
2.手形割引業者の推移
登録貸金業者は、昭和61年の47,504社をピークに平成29年3月末には1,581社(96.6%減)まで減少しています。その中で手形割引業を行っている貸金業者は、平成29年3月末で46社(日本貸金業協会加入業者数)とここ3年で27社減少しております。
 では、何故このように減り続けているのでしょうか。
  • 手形の流通量が減少し、手形割引業者への割引申し込みが減少した。
  • 市中金利(公定歩合)が下がり、手形割引利息も同様に下がり利益が出せない。
  • インターネットによる業者間の競争が激しく、低金利競争に陥り利益が出せない。
  • 手形割引利息が低利の割には手形の不渡りによる回収不能のリスクが高い。
  • 商工ローンを兼業していた業者は、過払い金による利息返還で倒産や廃業した。
  • 新たに手形割引業始めるには、専門性が高く、資金調達が容易でない。
 
3.手形割引業を安定的に継続できる業者の特徴
①手形割引業以外に主業となりうる事業(金融業以外)を他に持っている。
 手形割引業の業歴が長く、過去の蓄積がある業者は、その蓄積を活かし不動産賃貸業や その他の事業で事業リスクをうまく分散し、事業継続をしている。 特に銀行からの資金調達(割引枠確保)においては、所有不動産が担保となり高い信用を保つことが出来るため、銀行としても業者への支援がしやすい。
②優良な手形を低利な利率で割引をしている。
 「他社で断られた手形、個人振出の手形など割引出来ます。」と謳い、ある程度高い金利で割引をする業者を、時々興信所の債権者名簿にその名前を見る時がある。 このように不渡りになった手形債権が回収できずに未償却のまま資産として残り、徐々に資金繰りに窮するようになると手形割引業者は倒産する。 特に、遠方のネット顧客の場合、不渡りの回収は困難を極めるため、優良な手形が割引の対象となり、よって割引料もおのずと低利とならざるを得ない。
③インターネットや企業情報収集に積極的にコストを掛けている。
 インターネットへの投資状況で手形割引業者の事業への本気度がわかる。 スマートフォン専用のホームページを開設しているのはもちろんのこと、セキュリティーや情報の更新など常に最良の状態に保つには、日々の努力とコストが必要どなります。 さらに、リスティング広告への出稿や関連サイトの運営など多方面に渡りインターネットで事業を展開している。 また、最新の企業信用情報を取得するために企業年年鑑、調査データ、特別情報など購入し、日ごろから興信所との付き合いを密接に保つよう努力しています。
④お客様への「お役立ちに」よる良好な関係を心掛けている。
 優良な手形割引業者はお客様に手形のメリットを理解してもらい、手形を期日前に現金化することによりお客様のビジネスチャンスをさらに広げてもらうためにお客様に専門的アドバイスと低利な割引率で「お役立ち」をもって良好な関係を築くことを最優先に考えています。
上記の特徴が少ない業者は今後廃業する可能性が高いと思われます。
4.将来について
    ①インターネット専業とする手形割引業者
     インターネットに積極的に投資し、集客から手形割引実行後の送金までネットを最大限に効率良く活用できるシステムを構築し、取扱高もそれなりの事業規模を持っている企業は、事業継続が可能と思われます。 また、全国の多業種の手形を対象とするため社員は審査のスペシャリストとして高度な専門的知識が必要とされます。今後は、電子手形の普及・ネットバンキングの24時間化などさらに高度なネットサービスへの対応が必要となってくるでしょう。
    ②ローカルに徹した手形割引業者
     地元企業の手形を中心に地元のお客様を対象に、ある程度の割引率(金利)を取り手形割引を継続している業者も存在しています。 自己資金で事業規模は小さいがコストを極力抑えた運営が多いようです。 地方の中小企業の手形ならその地元の手形割引業者に依頼するほうが割引できる可能性は高いと思われます。
しかし、今後は手形割引の市場の先細りと後継者の問題などにより廃業や転業が進むものと思われます。